犬の断尾について 現状、歴史、必要性の詳細解説

犬の断尾とは、犬のしっぽをカットすることで、なぜ切るのかというと、主に医療目的と審美目的の2つの目的に分類されます。 現在、世界中で断尾の是非について議論が続いており、一部の国では法律で制限されています。記事では、犬の断尾の状況、歴史、必要性について詳しく解説します。

医療目的の犬の断尾

医療目的の断尾は、犬の健康上の問題や治療のために行われます。主な理由は以下の通りです。

感染症や損傷の治療

尾が深刻な感染や損傷を受けた場合、回復が困難であることから断尾が行われる場合があります。

腫瘍の除去

尾にできた腫瘍の治療のために、断尾が必要となることがあります。

先天性の異常

尾の骨や神経に先天性の異常がある場合、犬の健康や生活の質を向上させるために断尾が行われる場合があります。

審美目的の犬の断尾

審美目的の断尾は、犬の外見を整える目的で行われるもので、特定の犬種の品種基準に従って断尾が行われる場合があります。ドーベルマンやコーギーなどはよく知られています。

一般的に、断尾は生後3〜4日の子犬に対して行われています。

痛みの感知を抑制する神経経路は生後10日齢以上でないと完全に発達していないとも言われていますが、最初から感知できるとされる報告もあり、科学的に生後3〜4日齢に断尾をすることが適切かどうかは不明なままです。

しかし、現代のペットとしての犬にはそのような必要性は希薄であり、動物福祉の考察から問題視されています。

犬の断尾の歴史

犬の断尾は古代から行われており、主に狩猟や牧羊、番犬などの仕事をする犬に対して実施されていました。 当時は、尾が損傷や感染症を防ぐために、また課金の節約のために行われていたとされています。 しかしこれらの理由は、現代のペットとして飼われる犬にはあまり当てはまらず、動物福祉に疑問が呈されることが多くなっています。

断尾を実施されてきた対象犬種

以下が一般的に断尾を実施されてきた対象犬種です。

アイリッシュテリア
アメリカンコッカースパニエル
イングリッシュスプリンガースパニエル
ウェルシュコーギーペンブローク
ウェルシュスプリンガースパニエル
ウェルシュテリア
エアデールテリア
オーストラリアンシェパード
オーストラリアンテリア
オールドイングリッシュシープドッグ
キングチャールズスパニエル
クランバースパニエル
ケリーブルーテリア
コッカースパニエル
サセックススパニエル
シーリハムテリア
ジャーマンショートヘアードポインター
ジャーマンワイアーヘアードポインター
ジャイアントシュナウザー
ジャックラッセルテリア
シルキーテリア
スキッパーキ
スタンダードシュナウザー
スタンダードプードル
スパニッシュウォータードッグ
スムースフォックステリア
ソフトコーテドウィートンテリア
トイプードル
ドーベルマン
ナポリタンマスティフ
ノーフォークテリア
ノーリッチテリア
パーソンジャックラッセルテリア
ハンガリアンビズラ
ピンシャー
フィールドスパニエル
ブービエデフランダース
ブラッコイタリアーノ
ブリタニー
ブリュッセルグリフォン
ボクサー
ミニチュアシュナウザー
ミニチュアピンシャー
ミニチュアプードル
ヨークシャーテリア
レイクランドテリア
ロシアンブラックテリア
ロットワイラー
ワイアヘアードフォックステリア
ワイマラナー

犬の断尾の現状

近年、福祉動物の冒険から犬の断尾が指摘されることが増えており、審美目的の断尾は多くの国で禁止されています。 WASABA(World Small Animal Veterinary Association 世界小動物獣医師協会)では2001年に専門的に診断された治療上の理由を除いて、犬の尻尾のドッキングを違法と満場一致で決議しています。

これは法的拘束力はありませんが、断尾禁止に関しての流れが顕著になっていることがうかがえます。

ヨーロッパでの犬の断尾事情

ヨーロッパにおいては、1987年「ペット動物の保護に関する欧州協定」(The European Convention for the Protection of Pet Animals)Article 10 – Surgical operationsで審美目的の手術を禁止しており、批准国は25カ国です。2007年から審美目的の断尾が禁止。これにより断尾の廃絶が推奨されています。

イギリス

上記の協定未批准ですが、The Animal Welfare Act 2006 section6
特定の作業犬種を除き禁止としており、特定の作業犬種の断尾は獣医によってのみ行われるものとされています。

フランス

上記の協定を批准済みですが、断尾に関してはオプトアウトしています。

アメリカ

アメリカについては、法的なレベルによっては、州により対応が異なります。

アメリカ獣医師会(AVMA)は、断尾が犬の健康や福祉に悪影響を及ぼすとして、審美目的の断尾を行っています安全に推奨しています。

またオーストラリアやカナダでも同様の規制が施行されています。

日本・アジアでの犬の断尾事情

日本・アジアについては、法的規制はありません。

日本において犬種標準を統制している「ジャパン・ケンネルクラブ」(JKC)でも明確に反対の姿勢は見せていません。

犬の断尾の必要性

医療目的の断尾には、犬の健康や治療を改善するための限界がありますが、審美目的の断尾には明確な利益があるわけではありません。引き起こすことや、尾が持つコミュニケーション能力が失われることが指摘されています。

まとめ

犬の断尾は、医療目的と審美目的の2つに分類されますが、近年は動物福祉の規模から審美目的の断尾が問題視されています。 多くの国では審美目的の断尾が禁止されており、様々な国の獣医師会もそのような施術を推奨しておりません。

犬の健康や福祉を最優先に考えるなら、審美目的の断尾は必要なものでしょうか。また、犬の尾の健康を維持するためには、定期的なケアや観察が重要です。異常が見られた場合は、すぐに獣医師に相談して適切な治療を受けることが大切です。

メガネ犬編集長
メガネ犬編集長
審美目的の断尾や、慣習的な断尾は日本では明確な法整備がなく各自の倫理的な感覚に委ねられている部分が多いです。一方で、断尾されていない犬たちも多く見かけるようになりました。動物愛護の文化については、欧米に遅れる部分はありますが、ゆくゆくこの辺りも整備されていくでしょう。

重要なのは、医療目的以外での断尾は動物虐待に他ならないということを理解しておくことです。

断尾についてのよくある質問 Q&A

Q:そもそも、犬の断尾とは何ですか?

A:犬の断尾とは、犬の尻尾の一部もしくはすべてを切断することを指します。羊や牛などの家畜でも、飼養上の都合や衛生的な背景から断尾が行われることがあります

Q:犬の断尾はなぜ行われてきましたか?

A:断尾は主に二つの目的から行われてきました。一つは医療目的で、猟犬が茂みなどで尾が傷つくことを防ぐためや、牧羊犬が牛や馬に踏まれて怪我を防ぐためです。

また、これらの怪我からの感染症を防ぐためにも行われてきました。もう一つは審美目的で、人間の基準として犬種標準(スタンダード)として断尾を推奨するためなどがあります。

Q:現在の犬の断尾の状況はどうなっていますか?

A:現在、世界中で断尾の是非について議論が続いており、一部の国では法律で制限されています。

Q:医療目的と審美目的の断尾について説明していただけますか?

A:医療目的の断尾は、犬の健康を守るために行われます。猟犬が茂みなどで尾が傷つくことを防ぐためや、牧羊犬が牛や馬に踏まれて怪我を防ぐためなどがあります。

一方、審美目的の断尾は、犬種の特徴を保つためや見た目を美しくするために行われます。特に、ショードッグ(展示会に出展する犬)においては、犬種のスタンダードを満たすために断尾が行われることがあります。

Q:犬の断尾は痛みを伴いますか?

A:子犬は、尾の切断時に激しく発声する(「叫び声」)、平均24回の叫び声を発するという研究結果があります。そのため、断尾は痛みを伴うと考えられます。

Q:尾が長い犬は意思疎通に有利だという研究結果について教えてください。

A:長い尾の方が意思疎通としてうまくいく研究結果が発表されています。尾の長さが犬同士のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすことから、断尾はコミュニケーションに影響を与える可能性があります。

Q:日本では犬の断尾は法律で制限されていますか?

A:現在一部のブリーダーは、断耳や断尾はその犬種の完全性と美しさを実現するために欠かせないという考え方をしていますが、日本の法律では、現在、断尾の規制はありません。しかし、世界的な規制強化の流れの中、日本でも今後、法整備が進む可能性があります。

Q:犬種の完全性と美しさの観点から見た断尾についてはどのように考えられていますか?

A:断尾の歴史についてですが、牧羊犬の機能を損なわないために、断尾が行われるようになったとされています。

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メガネ犬編集長
ペット関連仕事についていた経験から編集長に就任。犬も猫も小動物も爬虫類も大好きです。 現在妻、息子、犬1、猫4、メダカ5匹と暮らしています。 目下の悩みは老猫の病気のケアです。